Kaare・Klint
コーア・クリント


コペンハーゲンのグルントヴィークス教会などで知られる建築家、ペーダー・ヴィルヘルム・イェンセン・クリント(Peder Vilhelm Jensen-Klint)を父に持ち、幼少時からすでにデザインや建築は生活の一部になっていました。 コーア・クリントの機能と美への関心は早くから始まっていました。1924年、コーア・クリントは、王立芸術アカデミーに 家具科を創設し、後に初代主任教授に就任しています。 デザイナーとして、そして教育者として、クリントは数多くのデザイナーに大きな影響を与えてきました。1940年初頭から始まるデニッシュモダンの黄金期を支えたハンス J. ウェグナー、モーエンス・コッホ、アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルムなどにも大きな影響を与えています。 現在、コーア・クリントはデザイン界に改革をもたらしたことで高く評価されています。デザインの歴史、実用的な機能の研究を通して建築や家具デザインの基本となる概念を教育。様式を重視したそれまでの建築や家具デザインの手法を大きく改革していきました。機能主義の先駆者として、クリントは比率を重視しました。人体各部のサイズやそれを 考慮した家具の機能性を追求し、製品に求められる機能を優先するデザイン手法をデンマーク家具デザイン界に 広めていきました。これまでのデザイン手法を改革し、求められる機能に更にフォーカスした家具を創り出したのです。 クリントは生涯を通じ、明確でロジカルなデザインを信条とし、最良の素材と秀逸なクラフトマンシップで製作される シンプルな家具を追求しています。 プロポーションと空間の把握、これはコーア・クリントの抜きんでた才能の一つと言えます。使用する人を最優先することを唱えた最初のデザイナーの一人であるクリント。その家具は、人間の体や動きを入念に検討しデザインされています。使用する人をデザインの基本とすることから、その作品は「人間のためのデザイン」と評価されています。 芸術アカデミーの家具科でクリントは、生徒たちに画期的な教育を実施。暮らしに使われている道具を計測させ、人々がどのような機能を求めているか調査させていました。こうした調査の目的は、家具が空間を支配するものでは ないということを啓蒙するためでした。これらの調査結果を基に、クリントと生徒たちは、フォルムと機能が同等に考慮 された家具を創り出していったのです。 クリントのデザインの大きな特徴は、素材とフォルムのバランスだけではありません、家具と空間の調和にもこだわりが見られます。シンプルなフォルム、質の高い機能性、時代を超えて通用するデザイン、そして、妥協の無い素材と製造工程など。こうした特長により、コーア・クリントの家具は、これまで以上に需要が高まっています。 コーア・クリントは、デザイナーとしてデンマーク王立芸術アカデミーが授与するEckersbergメダル(1928年)や C.F Hansenメダル(1954年)など数々の賞に輝いています。また、1949年にはロンドンで、「Royal Designer for Industry」を受賞しています。