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スタッフブログ

【2015.2.28】ルワンダのバスケット


ウェグナー椅子展が終わり、店内も少しスッキリといたしました。
そこに、新たに当店の商品として加わったアイテムがございます。

アフリカの「ルワンダ共和国」で一つ一つ編まれているバスケットです!!


皆様は「ルワンダ」という国をご存知ですか?
アフリカの中央に位置し、国土は四国の1.4倍程の大きさの国です。
この国の名を聞いたことがある方はきっと、1994年に実際に起きた凄惨なジェノサイドと、それを描いた映画「ホテルルワンダ」をご存知の方ではないでしょうか。

民族間紛争により、わずか100日間の間に100万人近くが亡くなった、あってはならない負の歴史です。

私は今から10年程前に、東アフリカの「ケニア」にしばらく住んでおりました。
住んでいる場所は首都のナイロビであったため、衣食住に困った記憶はほぼ無いのですが、治安が良くない街として有名でしたので、ひったくり等の注意は常にしておりました。

急成長を遂げているケニアの経済は活気が感じられ、日々、『生きる』ということを強烈に認識させてくれるエネルギーがたしかにありました。
そのエネルギーの源泉は、やはり、陽気で優しいケニアの人達の活力であったのだと、今でも思います。

そんな、ケニアからほど近い国であるルワンダで、数年前にそんなジェノサイドが起こっていたとは、ケニア滞在当時に映画「ホテルルワンダ」を鑑賞するまで知りませんでした。
映画に関する詳しい説明はいたしません。
皆様も機会があれば、どうぞ「ホテルルワンダ」をご覧になってください。

ケニアの人達も、ルワンダの人達も、私のような外国人にも気さくに接してくれる優しい性格に変わりはないと思っています。
むしろ、ナイロビの外国人慣れした人達よりも、ルワンダの人達のほうが、より親身にしてくれるかもしれません。

もし、ケニアでお世話になった方々が、民族紛争という名のジェノサイドに遭遇したとすれば、それは言葉では言い尽くせないほど悲しいことです。
それが、今から20年近く前、実際にルワンダで起こったことなのです。


今でも、ジェノサイドの影響はルワンダ国内に暗い影をおとしております。
主に男性がジェノサイドの被害にあったため、夫を失い未亡人となった女性がたくさんいるのです。
夫亡き今、女手一つで子供達(一家庭平均5人)を育てていかなくてはなりません。

当店にて販売しております、この「ルワンダ」のバスケットは、そういった女性達が一つ一つ丁寧に編んでおります。
バスケットには、それぞれ「希望」、「愛」、「感謝」といった意味の柄があり、凄惨な過去を教訓に、平和な将来を強く望む意思が込められているのです。
これらバスケットによる収益は、現地の縫い子さんへ平等な利益が行き渡るようフェアトレードが確立されています。


北欧のシンプルな家具とアフリカのプリミティブな小物とのコンビネーションが個人的に好みであり、デザイン、品質ともに素晴らしいと思ったのがこのルワンダバスケットです。
フェアトレードという理念は素晴らしいことだと思いますが、デザインに優れた物、そして北欧家具とのマッチングに適した物でなければ、当店にてこれらの商品を扱うことはございません。
そのような意味では、純粋にインテリア用品として優れていると、私自身は思っております。
決して、アフリカに滞在していた過去があるから、贔屓目で見ているという訳でもないんです。
その上で、バスケットに込められた意味を知っていただき、購入されてからも大切にご使用いただきたい想いで、今回はこのようにルワンダの紹介をさせていただきました。


ちなみに、私の知人や前の職場の同僚には、アフリカ滞在経験者が沢山おりますし、中には実際にルワンダに住まわれていた方もおります。
私がルワンダに関して誤った説明をしてはいけませんので、あまり深くは記述しません。
方々からツッコミが入るかも知れませんので・・・。


是非当店にて、ルワンダバスケットをご覧になってくださいね!!

【2015.2.24】ウェグナー椅子展は無事に終了しました


本日、ウェグナーの椅子展が無事に終了いたしました。
会期中には多くのお客様にお越し頂き、誠にありがとうございました。

ウェグナー作品に込められた技術の一端を感じていただけたのではないでしょうか。
また、ゴットランドシープスキンにもご注目をいただき、家具だけではなく、良質なラグを取り入れた北欧インテリアの可能性もご覧いただけたと思います。

今後も機会がございましたら、様々な展示会を計画させていただきますので、これからも当店を宜しくお願いいたします。


さて、展示会用のウェグナーの椅子をお返しする準備も終了し、店内も展示会前の状態へと戻りました。
さすがにヴァレットチェアを梱包する時は一抹の寂しさを覚えたのですが、とても高価な品物を大切に保管するプレッシャーから解放され、若干肩の荷が下りたような気分です。

明後日からは以前と同様に、北欧の椅子を中心に小物雑貨をご覧いただき易いよう、店内のレイアウトを戻します。
また、展示会中には豊富にあった椅子が減った分、新たに椅子の品揃えを増やす予定でおりますが、もう少し先になります。

展示会は終了いたしましたが、展示しておりました「ベアチェア」、「ヴァレットチェア」、「ザ・チェア」、「PP701」、「PP68」他、各種PPモブラー商品のご注文は常時承っております。
また、これまで同様にカール・ハンセン&サン、アルテック、フレデリシアの各種商品も全てご注文いただけますよ!!


今後も北欧インテリアの楽しいご提案ができるよう頑張りますので、期待していてくださいね!!

【2015.2.22】ザ・チェアーの興味深い話


ウェグナーの椅子展「100年を超えても受け継がれる技術」は、24日まで開催しております。
もう残すところあと僅かですよ!!


さて、様々なお客様が展示会中にお越しになっているのですが、その中に、当展示会でも展示しております、ウェグナーの名作「ザ・チェアー」を6脚お持ちのお客様がいらっしゃいました。

ウェグナーの椅子の中でも、最も憧れている人が多いと思われる、ザ・チェアーを6脚です・・・。
1脚でもとてつもないお値段がする椅子なのですが、6脚お持ちと言うことは、ダイニングチェアーとして普段も使用されているのでしょう。
本当に羨ましいです。

さて、それだけであれば「凄いですね」で話は終わってしまうのですが、実はこのザ・チェアーに関して、お客様からご相談がございました。
そのご相談というのも、実は50年ほど前に某大手デパートで開催された「knoll社」の催事で購入されたザ・チェアーということなのですが、この椅子の真贋を確かめたいとのことなのです。

通常、ウェグナーのザ・チェアーは笠木からアームへと繋がる接合部分にフィンガージョイントが施されております。
そのフィンガージョイントがザ・チェアーの代名詞となっており、ジョイント箇所が浮き出るように接着され、笠木とアームの木材のコントラストが美麗なザ・チェアーこそ、ビンテージの世界では価値が高いとされております。

このお客様が50年前に購入されたザ・チェアーは、フィンガージョイントがございません。
笠木からアームまで全て1枚の木材を曲木加工でシームレスに形成しているものらしいのです・・・。

初期のザ・チェアーには、フィンガージョイントではなく、凹凸ジョイントを使用して接合しているものもあり、その凹凸接合がみっともないという理由から、ウェグナーは笠木に籐を巻いて接合箇所を隠したという説もあるのですが、私の知る限りでは最初期のモデルに曲木を用いて笠木とアームを形成しているザ・チェアーは聞いたことがございません。
ただ、当時ザ・チェアーを製作していたヨハネス・ハンセン社は、ウェグナーから注文を受けた椅子の製作を数社の下請け会社に委託しており、下請け会社によって品質や製作方法が定まっていないことから、もしかすると曲木のザ・チェアーを作っていた下請け会社が存在するのかもしれません。

初期モデルのザ・チェアーには必ず、ヨハネス・ハンセン社の焼印(もしくは打刻印)が必ずあるのですが、お客様が所有しているザ・チェアーにはございませんので、本物なのか否かを判断する材料が少ないということなのです。

この曲木加工されているザ・チェアーが本物ということであれば、初期のモデルよりも更に以前、まさしく試作品(プロトタイプ)という可能性もあります。年代とすれば、ウェグナーがデザインした1949年から50年代初期に製作された試作品の内の数脚、もしくは日本での展示会用に製作された特別なモデルということになります。

50年ほど前に某デパートで開催された「knoll社」の展示会。
アメリカの「knoll社」は当時、ザ・チェアーの販売を請け負っていた会社として有名であり、「knoll社」の催事で展示販売されていたザ・チェアーということであれば、ヨハネス・ハンセン社とは関係がない偽物という可能性は低いのではないでしょうか。

いずれにせよ、私では真贋の確かめようがないので、ご存知であるだろう、この世界では著名な方々のご連絡先をこのお客様にはお伝えしました。

とても興味深い相談であったので、是非とも答えを導き出していただきたいものです。
このお客様は比較的当店から近い場所にお住まいとのことですので、本物であった場合は、是非ザ・チェアーを拝見させていただきたいですね。
そして、是非また展示会をさせてほしい(笑)!!


お店をしていると、こんな体験ができるのがとてもありがたいのです。
皆様も、価値に関係なく、ずっと大切にお使いいただける椅子を是非当店にてご購入くださいね!!

【2015.2.21】ベアチェアー


24日まで当店にて開催中の「ウェグナーの椅子展」。
とうとう、本日・明日が展示会最後の週末となってしまいました。

最後にご紹介する椅子は「ベアチェアー」です。

正式名称は「PP19 テディベアチェアー」。
熊さんが手を広げて立っているような形状から、通称「ベアチェアー」という愛称で親しまれています。

現在販売されているウェグナーデザインの中でも、最も高価な椅子としてあまりにも有名です。
椅子というよりも、一人掛けのソファーに近いですね。

その座り心地は、さすがの一言。
ウェグナーが自身の住まうサービスホームへ唯一持っていった椅子ということで、ウェグナーが自身の作品の中で最も座り心地が良いと認識していました。
ちなみにサービスホームとは高齢者向け住宅に選択制のデイサービスがついた自立度が高い介護施設です。
そのサービスホームで、ウェグナーは晩年を静かに過したと言われています。

さて、ご覧のとおり張り地はファブリックな訳ですが、これも職人さんが丁寧に縫い上げております。
私はファブリック張りに関してはあまり存じ上げないのですが、北欧ではファブリック張り職人や家具修復職人も指物職人と同じく、高度なマイスター資格がございまして、もちろんそれら資格を持った職人さんは、王室や大使館から家具修復の依頼が来ることもあるくらい高い技術を持っています。
PPモブラーほどの一流家具メーカーに在職する張り地職人さんであれば言わずもがな、どれほどの技術を持っているのかは想像がつきますね。

丁寧に張られたファブリックは、パイピングの裁縫の繊細さ、クッション性のよさ、均一な配置と圧で付けられたボタン等、しわ一つ無くとても綺麗に張られております。
そして、ここが重要なのですが、もしファブリック張りだけの技術が優れている椅子であれば、こんなにも高価なお値段は付きませんし、こんなにも快適な座り心地にはなっていないでしょう。
ベアチェアの本質は、ファブリックに隠されたフレームにあります。

ウェグナーは木製椅子製作で培った技術を惜しげもなくベアチェアーのフレームに活かしております。
ウェグナーの椅子は、デザイン性、快適性、耐久性、全てを兼ね備えていることで有名ですが、それらを実現するには細部まで丁寧な仕事が必要不可欠です。
負荷の掛かる場所へは十分な強度を持った接合技術を用い、耐久性を考慮し且つ人間工学に基づいた形状、そこにウェグナー流のデザインセンスを散りばめた作品は半世紀過ぎた今でも世界中で愛されています。

そうです。そうなんです。
ソファーのようにファブリックで隠されたフレームは、まさしくウェグナーの木製椅子なのです。

皆さんは安価なソファーの中を見たことがありますか?
生地の下には何層かのウレタンが張られ、その中にはコイルと木製のフレームがあります。
この木製フレームは通常目に見えるパーツではないため、多くの安価なソファーに使われているフレームはあまり加工がされていない(角のR加工や細かな番目の研磨、強度のあるホゾを用いた接合等)、四角く切り出したそのままの無垢材を簡単に繋げてあるだけではないでしょうか?

「ある程度の強度があればそれでいいんです。だって目に見えないもの・・・」

きっと、そのソファーの生産者はこのように考えていることでしょう。
たしかに、大量生産向けで安価なソファーはそれでよいと思います。

このベアチェアーは違います。
通常目にすることがないフレームの細部に至るまで、とても丁寧に作り上げています。
つまり、隠された生地の中に、もう一つのウェグナー作品が存在すると言っても過言ではない(大袈裟!?)。


ベアチェアーという愛称や、可愛らしい形状から、親しみやすいベアチェアー。
しかして、その中身は何とも恐ろしい技術とこだわりが詰まっているのでした・・・(笑)。


と言うわけで、現在展示中のベアチェアーを是非お試しくださいませ。

【2015.2.20】ザ・チェアー


現在開催中の「ウェグナーの椅子展」。
おそらくウェグナーの椅子の中で最も人気と知名度があるのは「Yチェアー」であることは、販売数からみて疑う余地のない事実なのですが、ウェグナーの椅子の中で最も憧れを抱いている人が多いのが、写真の「ザ・チェアー」ではないだろうか。

アメリカ大統領選のテレビ討論会で、ケネディ大統領が座った椅子として有名で、当初は本国デンマークではなくアメリカでの人気が高かった。
その後アメリカのみならず世界中で愛されることとなったのが、このザ・チェアーなのです。
ちなみに、最近ではオバマ大統領もCOP15で座っていますよ♪

特筆すべきは、なめらかな曲線を描いたアームと、そのアームから笠木へと繋がる接合意匠です。
大きなフィンガージョイントを使った接合部分なのですが、今では機械で無駄なく継ぎ手加工ができます。
ザ・チェアーを発表した当時はそのような機械はありませんから、やはり治具を駆使しつつ、手作業で一つ一つ行なっていたのでしょう。
今ではザ・チェアーの代名詞となっていますが、当時はウェグナー自身もみっともないとの理由から、このフィンガージョイント箇所を隠すために笠木全体に籐を巻きつけていたのです。
ちなみに、この籐を巻きつけたオリジナルバージョンは、昨年PPモブラーから200台限定で復刻されたそうな・・・。
是非とも拝見したかった。


さて、当店に展示してあるザ・チェアーはPP503という品番の、座面がファブリック仕様になっているものです。
ご存知の方なら、通常はザ・チェアー(PP503)の座面はレザー張りが思い出されるはずですよね?
たしかに、ザ・チェアーはウォールナットやチェリー材等の木目が際立つ木材にオイル塗装、座面はブラックレザーで仕上げた重厚感ただよう仕様で注文するのが一般的(というより、こだわる男性向き)なのですが、当店展示はオーク材ソープフィニッシュ仕上げ、ファブリック座面と、これまでの装いを覆す一風変わった仕様なのです。

でも、これまでのザ・チェアーにあった重苦しさが取れてナチュラルな雰囲気になっており、女性のお部屋にもスッと馴染むような感じがしませんか?
かのザ・チェアーが、塗装方法と木材、座面を変更しただけでこんなにも雰囲気が変わるものかと、私も初見で驚いた記憶がございます。

ザ・チェアーのファブリック座面の注文ができるようになったのは、つい最近とのことですが、これにより様々なお部屋のインテリアに調和する椅子となりましたね。
お値段はとて〜も高価な椅子ですが、当店にてお座りいただくお客様は口をそろえて、座り心地は他のウェグナーの椅子と比べても頭一つ抜きん出ている!!と仰います。
そして、ため息を漏らしながら、いいな〜、欲しいな〜とも・・・。
私も欲しいです(笑)
ここは安価なリプロダクトに走らず、是非とも本物を手に入れたいですね。


「世界で最も美しい椅子」とも言われるザ・チェアー。
死ぬまでには欲しいと思われている方も、きっと多くいるはず(私もその一人)。
是非、当店にて一度お座りになってください!!
その座り心地の良さに、他の椅子には座れなくなるかも(笑)。

【2015.2.19】ヴァレットチェア


現在開催中の「ウェグナーの椅子展」。
個人的にウェグナーの椅子の中で最も好みである「ヴァレットチェア」こと「PP250」も展示しております。

もともと、ヴァレットチェアはウェグナーがパイン材の価値を再評価させるためにデザインした椅子なのです。
もちろんデザイン当初はパイン材で製作され、その彫刻的な意匠と仕組み、そして卓越した職人技術を世に知らしめることに成功し、パイン材の再評価へと繋がったと言われています。
がしかし、現在ではパイン材は高級家具に使用される機会は少なく、今を持って建材用途という位置に留まっているのが残念なところ。

安価であり安定性も良く、木材の香りが存分に楽しめるパイン材は、個人的にはもっと評価されてもよい木材と考えているのですが・・・。
ただ、パイン材特有の樹脂が多いので、手道具での加工は少し骨を折るかもしれません。
その意味では、1950年代当時にほぼ手道具のみでこの美しい形状を作り出したウェグナーと職人さんの苦労を思うと、惜しみない賛辞を送りたいですね。

さて、ヴァレットチェアという名前の由来ですが、英語で「Valet chair」つまり”召使い・従者の椅子”ということになります。
独特の形状をご覧いただければお分かりだと思いますが、背もたれにジャケットなどを掛けていただくことができ、座面も開閉する仕組みとなっておりますので、前面に開いた状態の座面にパンツを掛けることができます。
また、座面の下には小物(装飾品等)を収納できるスペースがあり、まさに召使いのように洋服を受け取ってくれることからこの愛称が付いたようです。

ウェグナーがデザインをした椅子の中でも特に異彩を放っているこのヴァレットチェア。
デザインしたのは1953年。
50年代と言えば、Yチェアをはじめ、ザ・チェア、ベアチェア、カウホーンチェア等、最もウェグナーの傑作が生み出された、一番脂が乗っていた時期です。

この時代にこの椅子を生み出したことに大きな意味があると私は考えています。
前述したYチェアをはじめ、ザ・チェアもベアチェアも、デザインと座り心地を兼ね備えた傑作であることは皆様もご存知だと思いますが、木座面であり、独特な形状の背もたれを持つヴァレットチェアは、同時代にデザインした椅子に比べると座り心地は決して素晴らしいとは言えません。
また、座面の持つ仕組み故の問題として、座る時に座面後方が浮き上がることもあります。

つまり、ウェグナーにしては珍しく、椅子としての日常使用を考慮しているとは考えられないのです。
日常使用を採算度返しにしてでも、パイン材の再評価およびデザインとその仕組みを実現したかった。
職人・デザイナーなら誰しも考えることなのですが、偶に極稀に奇抜なものを作ってみたくなる!
1953年、脂の乗り切っているウェグナーもそのように考えたのではないでしょうか。
もしかしたら、前年の52年にニューヨーク国連ビル信託統治理事会議場のインテリアで注目を浴びた「フィン・ユール」の影響を受けて、真っ向から彫刻的な椅子の製作に挑んだのかもしれません。

ヴァレットチェア以降、新素材を使った椅子や一人掛けソファには面白い形状のものがありますが、木製の椅子に関しては、どちらかというとシンプルでナチュラルな形状の物に傾いているように感じられます。
きっとウェグナー自身がヴァレットチェアほど冒険をした椅子を再度作ろうと思うことはなかったのでしょう。

何故かウェグナーにとても親近感が湧いてきました(笑)。


このヴァレットチェアは高価なこともありますが、上記のような理由から、日常使いする椅子というよりも、工芸品として愛でて楽しむ用途が強いです。
ヴァレットチェアを持っていらっしゃる方の多くは玄関にドンと鎮座させていたり、リビングにオブジェの一つとして置かれていたりする方が多いようです。

本来であれば、椅子は座って使うもの。
いくら高級な椅子だからといって、椅子として日常使いできない椅子は、椅子としての価値はないと常々考えている私ですが、ことヴァレットチェアに関しては、座らなくてもよい椅子ではないかと考えています。
ウェグナー自身も、座る用途を重要視していないと推察しているからなのですが・・・。
もし違っていたらごめんなさい。
でも、それほどに見ていて美しいと感じる椅子なのです。
個人的に、写真の角度、後方斜めから見やるヴァレットチェアは何度見てもため息が出ますね。
おそらく、その優美な形状がどちらかというと女性的なラインと感じられるからかもしれません。


ヴァレットチェアはPPモブラーの職人の中でも、特に技術力が高い人しか製作することが許されない、いわばPPモブラーという北欧屈指の職人集団が在職する工房において、最終試験的な役割を持つ椅子だそうです。

是非、ヴァレットチェアを当店にてご覧になってください!
そして座ってください!!

【2015.2.18】PP701


現在開催中の「ウェグナーの椅子展」。
その中に、PPモブラー社の中でも屈指の人気を誇る椅子がございます。
それが、写真の笠木を持つ「PP701」なのです。

PP701はウェグナー婦人が最も好きな椅子ということで、ウェグナー自邸のダイニングでも使用されています。

このPP701を最も印象付けるパーツは、やはり綺麗な契り部分ではないでしょうか。

無垢で削りだした木材を繋ぐ際、強度を維持するための接合意匠は様々あるのですが、ことPP701に関しては、十字に配した契りと、この契りを挟むように上下に配してある化粧板がとても素敵なのです。
無垢材箇所は上下左右それぞれ木目が対称となるように接着されてますし、契りに関してもかなり慎重に木材を削っていかないと形がくずれてしまいます。
最終的に職人さんが丁寧に作っていることが容易に想像できますね。

ウェグナーの椅子の中で、PP701と同様にスチール脚を持った椅子が、カール・ハンセン&サンから昨年復刻販売されているCH88です。
CH88はカウホーンチェアを踏襲したデザインの笠木を持ち、座面は合板、ファブリック、レザーから選択できる、かなりバリエーションに富んだ椅子なのですが、比較的お値段が手頃ということもあり、当店でも人気の椅子です。

CH88はPP701と比べて、約半分のお値段であることもあり、両方を比べられて購入される方が多いようです。

比較的近い形状・素材を持っている椅子にもかかわらず、このお値段の差が出てしまうのは、やはりPP701の笠木部分、契りの加工がかなり手間をかけていることから考えられます。
また、PPモブラーは手作業による加工が多いので、カール・ハンセンと比べて高価となってしまうのですね。

好みと予算で、どちらの椅子を購入されるか検討ください。

座り心地に大差はないのですが、やはりPP701の契りは美しい!!と誰もが納得すると思います。
この契りだけで、数万円高くなってもいいかな・・・と個人的には考えてしまいますが、数脚購入を検討しているのであれば、かなり値段の差が出てしまいますね。
CH88の笠木も、カウホーン形状がとても良く出来ていて、肘を置いていただく箇所が安定するので、とてもリラックス出来ますし・・・悩みどころです。

この展示会中に当店にて展示しているPP701は、ウォールナットの笠木でメイプルの契りを持った、PPモブラーの新製品です!!
是非、美しいウォールナットの木目と契りのコントラストを当店にてご覧ください。

【2015.2.17】PLUS 1 Living no.90掲載のお知らせ


ウェグナーの椅子展「100年を超えても受け継がれる技術」は、引き続き24日まで開催しております。

また、アルテック製品が15日から、価格改定により平均5%ほど値上がりしました。
当店取り扱い中の「Stool60ムーミンモデル」も同様にメーカーでは値上がりしておりますが、当店では旧価格での在庫品に限り、旧価格にて販売しております。
しかも、今月末まで特別価格の20%オフにて販売しておりますので、お探しの方は是非!!


さて、本日も当店が掲載された雑誌のご紹介です!!
本日2月17日発売の「PLUS 1 Living」no.90号の巻末「Interior Information」のコーナーに小さく当店が掲載されております。

「PLUS 1 Living」は3ヶ月に一度、主婦の友社が発行するインテリア季刊誌で、海外インテリア事情や、達人のお部屋紹介、センスのよいインテリアの提案等、とても内容が詰まっており読み応えのあるインテリア誌なのです。

素朴でナチュラルなインテリアの提案がツボを押さえており、とても勉強になります。
no.90号では「本当に使える家具HOT150」として、各有名インテリアショップがイチオシの自社家具を紹介してます!
自社のコンセプトを体現できるオリジナル家具を販売するのは、とても素晴らしいこと。
いつかは当店もオリジナル家具を販売できればいいな。


さてさて、そんな訳で「PLUS 1 Living no.90」は本日から全国書店にて発売です!!
書店にて見かけたら、是非お買い求めくださいませ!!

個人的には小泉里子さんのテーブルコーディネートのページに毎回癒されます(笑)。

【2015.2.11】サファリチェアー


ウェグナーの椅子展「100年を超えても受け継がれる技術」は、本日11日より開催しております。
当展示会の告知を「自由が丘経済新聞」様のご協力により、同ウェブサイトならびにヤフーニュースでもご紹介いただきました。
多くの方のご来店をお待ちしております!!


さて、最近インテリアスタイリストならびに業界関係者から熱い注目を浴びている椅子がございます。
展示会中ということもあり、ウェグナーの椅子!!といいたいのですが、今回はウェグナーの椅子ではなく、近代デンマーク家具の父といわれる「コーア・クリント」の椅子です。

コーア・クリントはデンマーク王立芸術アカデミー家具学科の初代教授となった人。
その功績は大きく、後の家具デザイナーに多大な影響を及ぼしました。
当店でも取り扱っているフレデリシアJ49をデザインしたボーエ・モーエンセンも、彼に師事したひとり。
ウェグナーも彼のデザイン哲学に少なからず影響を受けていることでしょう。
つまり、彼がいなければ現在の北欧家具はもっと別の形となっていたに違いないのです。

彼がデザインした「SAFARI CHAIR(サファリチェアー)」が今回ご紹介する、巷で話題の椅子でございます。

実は昨年末、当店に展示してあるサファリチェアーが、名前の如くサファリ(スワヒリ語で「旅」の意味)に行っておりました。
どこに旅していたかと言いますと、1週間ほど、とある撮影用にリースをしていたのです。
しかも、これまた偶然なのですが、撮影ロケ地が私の故郷である香川県!!

実は、サントリーの「オールフリー」というノンアルコールビールの広告に、当店のサファリチェアーが使われております。
すでに電車の中吊り広告、駅構内のポスター等にてこの広告が公開となっておりますので、ノンアルコール愛好家の方はご存知の方もいらっしゃると思います。
この広告に写っているサファリチェアーを見かけましたら、当店に展示してあるサファリチェアーだと思って下さいませ。
幸運なことに、綺麗な女優さんと共演しており、当店のサファリチェアーも喜んでいることでしょう(笑)。

最近は私が実家に帰省できていないので、椅子が代わりに帰省してくれたというお話です。
ちなみにオールフリーのウェブサイトでこちらの広告をご覧いただけますよ。

ともかく、このように俄然注目度が増しているサファリチェアー。
お値段は、少し高価なのですが、ノックダウン可能・背もたれがフレキシブル・屋外での使用も快適といった機能を考えると、ご納得いただけると思います。

ウェグナーの椅子だけが、北欧の優れたデザインではございません。
より玄人好みの、このようなチョイスもオススメしております!!

【2015.2.10】ウェグナー椅子展の準備中


「ウェグナー椅子展」は、明日11日から開催いたします。

展示会に向けて、あわただしく準備中でございます。
準備とは言っても、展示用の椅子を置くだけなんですけれどね(笑)。

ご覧のとおり、個人的に一番のお気に入りである「ヴァレットチェア」が堂々と鎮座しております!!
他にも「テディベアチェア」、「ザ・チェア」といったウェグナーの3大マスターピースが揃い、展示会に華をそえます。

もちろん、これらの椅子にお座りいただくことが可能ですので、ご遠慮なくお声掛けくださいね。

今回の展示会、副題として「100年を超えても受け継がれる技術」としています。
これは、100年後も受け継がれるべき技術を知るという意味で付けさせていただいております。
ですが、ウェグナーがデザインした当時と現在では、製作過程に大きな違いがございます。
例えば、今回展示される「PP503ザ・チェアー」はヨハネスハンセン社から発表された1950年当時とPPモブラーが製造している現在とでは、使われている機械が少し異なります。

恐らく、1950年代当時は職人が全てのパーツを簡単な機械と手作業で形作っていったのでしょう。
脚の部分は木工旋盤と鉋を使って、背板部分は冶具に合わせてシェーパーで削って、機械で加工できない曲線は職人が手作業で形成していく。
現在同様の作業工程を経て製品化している家具メーカーは、大型のNC機器導入が難しい小・中規模の木工房もしくは木工技術を学ぶ学校や施設だけなのかもしれませんね。
カール・ハンセンは、現在では大型のNC機器を導入し、おおまかな形成は機械で行い、最終仕上げを職人による手作業で行なうという工程を取り入れています。
おそらくPPモブラーも大枠の切り出し成型に関しては、50年代当時に存在しない機械で加工していると考えられます。

より短時間で、同様の形状の物を作ることができるので、現在の家具作りにおいてこれらの大型機器使用は欠かせないのかもしれません。
それが北欧の人気ブランドとなれば尚更です。
カール・ハンセンほどの販売数を誇るメーカーであれば、その供給を維持するためには仕方がありません。
現在の価格で提供することができるのは、このような大型機器があってこその結果といえます。
PPモブラーも同様の機械を導入しつつも、その作業工程のほとんどは職人の手仕事によるところが大きいです。
それが現在の販売価格となって表れております。

ここで、皆様に知っておいていただきたいのは、「椅子」という家具だからこそ、その後の作業工程がより重要となってくること。
大型の機械である程度切り出しているのであれば、もう少し値段を安く出来るのでは?と考えている方も多くいると思いますが、こと椅子製作において重要なのは、その後の組み立て作業にあります。
箱物の家具と違って、人が座ることを前提に作られている椅子は、組み立て(接着)がキモとなってきます。
全体のバランスと強度を調整しながら接着しなければなりません。
少しでも歪みがある状態で接着してしまうと、座った時に違和感が出てしまいます。
これらを考慮し、慎重に圧着していくのです。

複雑な形状になればなるほど、接着の難易度も上がっていくのは皆様もお分かりになると思います。
特に、カール・ハンセンやPPモブラーといった北欧家具メーカーは、接着箇所も隙間なく綺麗に仕上げているのが見て取れますね。
これだけでも職人さんの技術力の高さが判断できます。


少し話が長くなってしまいましたが、最新の大型機械を使っての作業工程に関しては、私も詳しくはございません。
ですので、どちらかというと1950年当時の製作技術(ほぼ手作業)を少しでも受け継いでいこうよ!!という主旨なのです。

展示会中には、現在、PPモブラーにてザ・チェアがどのように作られているか、そして大型機械を使用しないで製作を行なう工程(学生の作業現場)を少しだけ映像でご紹介したいと思っております。

これらの映像を観て、北欧の家具作りの素晴らしさを知っていただければと思います。


明日11日より開催の「ウェグナーの椅子展」。
是非当店にご来店いただき、触れて、座って、製作に関して語り合いましょう!!
その道のプロの方、知識が未熟な当方に色々と教えてください(笑)。

【2015.2.06】インテリアショップファイルvol.11掲載のお知らせ


着々と、ウェグナー椅子展と確定申告の準備を進めつつある今日この頃。
先日発売の「家庭画報3月号」掲載の反響も覚めやらぬうちに、本日発売の「Interior Shop File vol.11」にも当店が掲載されております。

「Interior Shop File」は東京をメインに、全国のインテリアショップを紹介するガイドブック。
また、最新のインテリアトレンドや各国の家具見本市情報等、内容の詰まった書籍なのです。

年1回の発行ですので、2015年〜2016年にかけて、今行くべき最新インテリアショップが網羅されています。

そのインテリアショップ群の一つとして、当店「SABOT Furniture」も掲載されておりますよ。
また、このガイドブックの良いところは、カテゴリー毎に分けてショップが掲載されていること。
例えば、当店は「ミッドセンチュリー&北欧ヴィンテージ」というカテゴリーのページに掲載されているのですが、他にも「新店舗(リニューアル店舗)」 「モダンデザイン」 「オリジナル家具」 「アンティーク」 「和ナチュラル」 「アジアンリゾート」 「ファブリック」といったカテゴリーに分けられています。

どのページを見ても、業界では名だたるインテリアショップばかり。
当店のような小さな店舗を掲載いただいて、まことに恐縮です。

「Interior Shop File」を片手に、インテリアショップ巡りをされている方も多いと聞きます。
自由が丘にお越しの際には、是非当店も覗きに来て下さいな。
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